ステンレス(SUS)の大型・大物加工
こちらの記事では、ステンレスの大型加工に関する概要と、実際のステンレス加工事例をご紹介いたします。
ステンレスの特徴
耐食性が高い
ステンレスの語源である、Stain(サビ)+ less(にくい)からもわかる通り、ステンレスの最大の特徴は、耐食性がある=錆に強いという点です。そのため、食品業界を中心に様々な製品で使用されています。
また、ステンレスはクロムを10.5%以上含み、炭素が1.2%以下の合金鋼ですが、クロムの含有量が高くなればなるほど「不動態被膜」と呼ばれる表面の酸化被膜も強固になり、さびにくくなります。
強度が高い
ステンレスは、鉄と比較して強度が高いです。鉄と同じ強度で、薄くすることができるので、軽量化に繋がります。
耐熱性に優れている
ステンレスは熱に強く、500℃までは引っ張り強度が大きく落ちません。また、熱伝導率が低いため、飲み物を保温する水筒に採用されています。
ステンレスの種類
オーステナイト系
オーステナイト系ステンレス鋼は、クロム16~20%、ニッケル8%以上を含むステンレス鋼の一種です。このオーステナイト系は、クロムとニッケルを主成分とし、耐食性に優れ、常温の状態でオーステナイトという金属組織を形成する唯一のステンレス鋼です。
オーステナイト系ステンレス鋼は、錆びに対する強力な耐性を持ち、耐熱性も高いため、さまざまな製品に広く使用されています。電気機器の部品や産業設備、家庭用品、自動車部品、建築用品など、幅広い分野で利用されており、特にSUS304やSUS316といった代表的なオーステナイト系鋼種が多くの製品に使用されています。
また、オーステナイト系ステンレス鋼は、その優れた冷間加工性と溶接性にも注目されています。深絞りや曲げ加工が容易で、靭性に富んでいるため、さまざまな製品形状に加工することができます。さらに、耐食性が高く、低温や高温環境でも優れた性能を発揮します。
これらの特性により、オーステナイト系ステンレス鋼は家庭用品から建築用材料、自動車部品、化学工業、食品工業、合成繊維工業、原子力発電、LNGプラントなど、広範な用途に適しており、全ステンレス生産量の60%以上を占めています。このステンレス鋼の優れた性能と多様な用途は、産業界において重要な存在です。
マルテンサイト系
マルテンサイト系のステンレス鋼は、クロムと炭素を主な成分とし、ニッケルを含まない特別な鋼です。この鋼は熱処理によって非常に硬いマルテンサイト組織を形成し、そのため硬度が非常に高い特性を持っています。しかし、他のステンレス鋼と比較すると、耐食性が劣り、特に厳しい環境下では錆びやすいという欠点もあります。
このマルテンサイト系の鋼は、刃物やノズル、タービンブレードなど、硬度が重要な要件を持つ部品の製造に広く使用されています。代表的なマルテンサイト系の鋼種には、SUS403やSUS410があります。これらのステンレス鋼は、カーボン0.1~0.4%、クロム12~18%を含んでおり、熱処理によって硬化します。
ただし、炭素含有量が少ないため、耐食性にはやや劣り、外部から鉄などが付着するともらい錆びが発生する可能性があります。しかし、この欠点を補うため、炭素含有量の多いステンレス鋼も存在します。例えば、SUS420は高炭素の13クロム系であり、刃物や外科用器具に使用され、優れた耐磨耗性を持っています。また、SUS440は18クロム高炭素系であり、最も硬度の高いステンレス鋼です。軸受やベアリングに用いられています。
フェライト系
フェライト系のステンレス鋼は、ニッケルを含まず、硫黄を含むガスに対して腐食しにくい特性を持っています。フェライト系は磁性を持ち、溶接性も悪くないため、建具や家庭用品などさまざまな場面で利用されています。一方で、オーステナイト系に比べると耐食性は劣る傾向にあります。
代表的な18クロム系のステンレス鋼であるSUS430は、熱処理による硬化がほとんどなく、軟質な状態で使用されます。このグループのステンレスは成形加工性と耐食性が優れており、溶接性も良好です。そのため、厨房用品、建築内装、自動車部品、ガス・電気器具部品など幅広い分野で使用されています。最近では製錬技術の進歩により、より低炭素で成形加工性と耐食性が優れた鋼種が登場し、さまざまな用途に利用されています。
ステンレスを加工する際のポイント
一般的に金属を切削する際には、摩擦によって高温の熱が発生し、切粉と一緒に排出されます。しかし、ステンレスは熱伝導率が低いため、熱を効果的に伝えず、低温の切粉が加工品に付着しやすくなります。この熱は切削工具に留まり、工具刃先の欠けや焼け付きなどの欠損を引き起こす可能性があります。そのため、遅い速度で加工したり、適切なクーラントを使用するなどして、温度が高くなりすぎないように調整する必要があります。
また、ステンレスは加工硬化と呼ばれる性質を持ち、負荷をかけるとさらに硬くなります。そのため長時間ステンレスを加工していると、硬くなり、削りにくくなってしまいます。工具が破損しやすくなるため、注意が必要です。
当社の大型サイズのステンレス加工
当社では、ステンレスの加工の中でも主に、大型サイズの加工を得意としています。オークマ製の5面マシニングセンターを2台、門型マシニングセンタを2台、OKKの門型マシニングを1台保有しており、高精度な加工が可能です。最大、2,500×5,000までのサイズに対応しています。
大型・大物サイズのステンレス加工の事例
食品機械用プレート(SUS403、27×580×800)
プレート厚が27mmと薄い設定なので、熱変異による歪みが発生しないように切削速度を調整することで精度を実現しました。
大型・大物サイズのステンレス加工のことなら、大型機械加工センターにお任せください!
こちらの記事では、大型・大物サイズのステンレス加工の概要と実際の加工事例についてご紹介いたしました。
大型機械加工センターを運営する応原工業では、5面加工機を2台、その他の門型マシニングセンタを3台保有しています。□300から最大、2,500×5,000までのサイズを1個から製作可能です。
広島県から中国・四国エリアを中心に全国対応しています。大型・大物サイズの精密加工のことなら当社までお気軽にご相談ください。